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ここでは、リンクと著作権の問題について概説しています。なお、リンクと著作権の問題を巡っては、2020年法改正でリーチサイトを違法化する法案が成立しています。一部ハイパーリンクもリーチサイト規制によって違法となる場合があります。インターネット上の明らかに著作権侵害をしている違法なサイト(海賊サイト)にはリンクをしないようにしましょう。ここでは、法改正前のリンクと著作権の関係に関する考察を記載しています。

PR 弁護士齋藤理央は、リツイート事件などインターネット上の著作権侵害が問題となる事案を担当、解決してきた実績がございます。インターネット上の著作権トラブルについて、相談、調査、紛争解決のご依頼がある場合はお気軽にお問い合わせください。

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    リンクと著作権

    リンクは、インターネット上の他のサーバーや、同一サーバーに保存されている別のファイルを読み込むための<参照>とされています。

    たとえば、↓のような画像やURLをクリックすると、別のサーバーに保存されているページに飛ぶ(=htmlタグで指摘されたファイルをクライアントコンピューターが読み込んでブラウザに処理結果が表示される)ことになります。

    このリンクの適法性を巡って、承認を得たリンクは当然別として、無断のリンクについて、かつて論争が行われた時代もあったようです。

    では、無断リンクは著作権法上違法なのでしょうか。

    まず、上記の用なURLや、文字、画像にタグでファイルを指定してリンクを張る行為は、基本的には著作権法上問題は生じないと解されます。なぜなら、文字、画像にタグでファイルを指定してリンクを張る行為は、リンク先のファイルが保管されたサーバーコンピューターと、クライアントコンピューターのやり取りを促すにすぎず著作権法上の複製や翻案と評価できる行為や、公衆送信(自動公衆送信及び送信可能化)と評価できる行為を見出すことが難しいからです。

    インラインリンク(直リンク)について

    これに対して、下記のようなリンクはどうでしょうか。

    このリンクの問題点は、上記「双眼鏡」の画像ファイルが、本ブログとは別のサーバーに保存されている点です。この画像の表示方法は、いわゆる直リンクといわれる方式で、無断で直リンクを行って画像や文章を表示させる行為は、著作権法上問題があるとの指摘も多い部分です。

    では、無断で通常の方式でリンクを張ることと、直リンク形式でリンクを張ることは、どのように違うのでしょうか。また、無断の直リンクによって直接画像や文章を表示させることには、どのような著作権法上の問題点があるのでしょうか。

    直リンクに関して従来指摘が多かったのは、リンク元の画像や文章をリンク元のサイト作成者の承諾を経ずにレイアウトを崩してその一部を表示させることから、同一性保持権や、翻案権を侵害するという指摘でした。確かに、全体として一つの文章として完成する文章の一部や、ウェブサイトの他の要素と一体としてデザインを構成している画像を抜き出して、別個のサイトに表示させる行為は、リンク元の文章全体を著作物として成立する同一性保持権や翻案権、リンク元のウェブサイト全体の著作物上に成立する同一性保持権や翻案権を侵害することは明らかと考えられます。

    では、「文章」や「写真イラストなどの画像」を寄稿しただけで、ウェブサイト全体のデザインには全く関与していない著作権者が、「文章」全体や「写真イラストなどの画像」を、同一性を損ねることなく無断で直リンクされた場合、著作権法上の問題は生じないのでしょうか。

    この点、参考になるのが、ロクラクⅡに関する最高裁判例(平成21(受)788  著作権侵害差止等請求事件 平成23年1月20日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄差戻 )です。同判例は「放送事業者である上告人らが,「ロクラクⅡ」という名称のインターネット通信機能を有するハードディスクレコーダー(以下「ロクラクⅡ」という。)を用いたサービスを提供する被上告人に対し,同サービスは各上告人が制作した著作物である放送番組及び各上告人が行う放送に係る音又は影像(以下,放送番組及び放送に係る音又は影像を併せて「放送番組等」という。)についての複製権(著作権法21条,98条)を侵害するなどと主張して,放送番組等の複製の差止め,損害賠償の支払等を求め」た事案です。

    同判例において、最高裁判所は、「放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(以下「サービス提供者」という。)が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器(以下「複製機器」という。)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするもので
    あっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。すなわち,複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であるところ,上記の場合,サービス提供者は,単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず,その管理,支配下において,放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという,複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしており,複製時におけるサービス提供者の上記各行為がなければ,当該サービスの利用者が録画の指示をしても,放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであり,サービス提供者を複製の主体というに十分である」などとして、複製行為の主体性を判断しました。

    そのうえで、補足意見において、「「カラオケ法理」は,物理的,自然的には行為の主体といえない者について,規範的な観点から行為の主体性を認めるものであって,行為に対する管理,支配と利益の帰属という二つの要素を中心に総合判断するものとされているところ,同法理については,その法的根拠が明らかでなく,要件が曖昧で適用範囲が不明確であるなどとする批判があるようである。しかし,著作権法21条以下に規定された「複製」,「上演」,「展示」,「頒布」等の行為の主体を判断するに当たっては,もちろん法律の文言の通常の意味からかけ離れた解釈は避けるべきであるが,単に物理的,自然的に観察するだけで足りるものではなく,社会的,経済的側面をも含め総合的に観察すべきものであって,このことは,著作物の利用が社会的,経済的側面を持つ行為であることからすれば,法的判断として当然のことであると思う。」と述べれています。

    また、補足意見において、「法廷意見が指摘するように,放送を受信して複製機器に放送番組等に係る情報を入力する行為がなければ,利用者が録画の指示をしても放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであるから,放送の受信,入力の過程を誰が管理,支配しているかという点は,録画の主体の認定に関して極めて重要な意義を有するというべきである。したがって,本件録画の過程を物理的,自然的に観察する限りでも,原判決のように,録画の指示が利用者によってなされるという点にのみに重点を置くことは,相当ではないと思われる。」とも述べられています。

    このように、複製行為、公衆送信行為など、著作権法上権利者が排他的に実行する権利を専有する行為について、行為主体は、物理的、自然的観点だけからではなく、社会的、経済的側面も勘案して、規範的に決せられることになります。そして、社会的、経済的側面のどのような点をどの程度勘案するかは、行為の性質によっても、異なってくることになります。

    この考え方を投影した時、通常の形式のリンクと、直リンク形式のリンクにおいて、大きな相違点を見出すことも可能といえるのではないでしょうか。

    すなわち、通常のリンク形式の場合、リンクをクリックするのはクライアントコンピューターを使用しているユーザーであり、クリックの結果、クライアントコンピューターとリンク先のファイルを保存しているサーバーコンピューターが直接やり取りを行い処理結果がブラウザに表示されることになります。このように、通常形式のリンクにおいては、物理的、自然的観点だけでなく、社会的、経済的観点を加味して観察しても、リンクを貼ったファイルを公開したサイト作成者には、複製(クライアントコンピューターのキャッシュメモリ作成など)行為や、公衆送信行為の主体性を観念する余地はなさそうです。

    これに対して、直リンク形式の場合、仮にリンクを貼った文章全体を直リンクで表示したり、画像を元のサイズで表示するなどして、直リンクにより表示させる文章や画像の同一性保持権や、翻案権を侵害しなかったとします。しかし、直リンク形式による文章や画像がどういったレイアウト、環境で表示されるかは直リンクを貼ったものが決することが通常です。また、直リンクが貼られている場合、通常画像や文章のリンク元にリンクしないと考えられます。したがって、文章や画像の表示による利益(サイトアクセスや、サイトアクセスから導かれる広告効果、アフィリエイト収入など)は、直リンク形式のリンクを行った者に帰属するのが通常です。

    以上の点をかんがみて、直リンク形式の場合、直リンクにより表示される文章や画像について、直リンクを貼ったウェブサイト上の表示に限定すれば、公衆送信や複製の主体(公衆送信やキャッシュメモリ上の複製(仮に複製にあたるとすれば)性を、直リンクを貼った者に見出すことも不可能とはいえなさそうです。

    リンクと不法行為、著作権侵害

    このように、インターネットの基本動作のひとつであるリンクについては、著作物に対してリンクを張る場合、様々な論点が生じます。

    著作権侵害及び不法行為法の基本的な理解が問い直されることになります。

    そもそも、不法行為と著作権侵害行為のイコール性が問題となります。不法行為とは、故意又は過失により他人の権利その他法律上の利益を侵害する行為です。また、著作権は禁止権です。このため、著作権が禁止する行為を行うこと自体、他人の権利を侵害する行為ということになります。よって、損害の発生や、故意過失はさておき、著作権の禁止規範に触れる行為はすべて、権利を侵害する行為ということができます。

    では、共同不法行為はどうでしょうか。共同不法行為にいう共同行為は、権利侵害と因果関係が認められる共同関連行為であると考えられます。その意味で、禁止権たる著作権侵害に対して共同不法行為といい得る行為は、両者の行為が不可分一体となって著作権が国民に与える禁止規範に反するような行為そのものを指すのか、また、禁止規範に複数の者が共同して触れる場合が想定されるのか、あるいはそうした場合を観念していくべきなのか、様々な問題点が生まれてきます。

    あるいは、共同不法行為は幇助や教唆のような類型もおいています(民法719条2項)。したがって、ある禁止規範違反が問題となるとき、教唆や幇助の類型による関与も、共同不法行為責任を負うことになります。
    この意味で、共同して禁止規範に違反する場合を観念する必要があるのか、という疑問も生じてきます。

    さらに検討しなければならないのが、著作権侵害の個数の問題です。例えば、複製権や譲渡権などの場合は個数を観念しやすいと考えられます。禁止規範に反する行為1つ1つが、権利侵害を構成することは、論を待ちません。

    ところが、複製権や譲渡権においても、一回の行為で複数の結果が生じてしまう場合などには、権利侵害の個数をどのように捉えるのか、という問題が生じてきます。さらにリンクとの関係では、公衆送信権のうち、送信可能化権などのように、包括的に侵害利益を保護する類型についてはもっと難しい問題に答えを出していかなければなりません。

    すなわち、複製権や譲渡権において、一度に複数の権利侵害をした場合、侵害行為も権利侵害の個数に応じて観念できるとの帰結は採りやすいものと考えられます。

    これに対して、送信可能化権侵害の場合、将来発生する自動公衆送信行為の予備的行為を禁止する関係で、一つの権利侵害しか観念できないのか、或いは、リンクにより拡大した送信範囲を別の保護対象として切り分けて、複数の権利侵害が観念できるのかという問題が考えられます。仮に、リンクにより拡大した送信範囲を別途観念して権利侵害を複数観念する余地があるのであれば、リンクによる共同著作権侵害という類型も観念し得るものと考えられます。或いは、リンク生成者を主体とする公衆送信権侵害というものも存在し得るとの帰結になるものと考えられます。

    また、少なくともリンクによって生じた自動公衆送信権侵害は、一つ一つがそれぞれ単独で公衆送信権を侵害します。この一つ一つの公衆送信権侵害を念頭においたとき、リンクの態様によっては、リンク生成者を権利侵害主体と評価できるのか、という問題もあります。

    さらにプロバイダ責任制限法との関係でも、幇助や教唆といった間接侵害に基づく損害賠償請求が、発信者情報開示の対象となるのか、検討されなければなりません。すなわち、法は、「当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)」の開示請求権を与えているに過ぎず(プロ責法4条1項柱書)、損害賠償義務者の情報開示を認める体裁とはなっていません。

    例えば、口頭で違法なアップロードを教唆した者が、損害賠償義務を負うとしても、発信者には該当しないことは明らかとも言い得ます。これに対して、リンクという形式で違法な自動公衆送信に与した者が、侵害情報の発信者といえるかは議論の余地があるものと考えられます。

    この問題は「侵害情報」の解釈論とも考えられます。すなわち、著作権侵害を構成する侵害情報が、直接侵害を構成する情報に限定されるのか、これを超えて幇助を情報発信によって実現した場合のその情報を含むのか、という問題に引き直して考えることができると思われます。

    GS Media BV v Sanoma Media Netherlands BV and Othersの本邦著作権法解釈に与える影響

    リンクと著作権侵害の関係を巡って、WIPO(World Intellectual Property Organization)著作権条約8条(WIPO Copyright Treaty Article 8)、欧州著作権指令(Directive 2001/29/EC of the European Parliament and of the Council of 22 May 2001 on the harmonisation of certain aspects of copyright and related rights in the information society )3条1項を巡るGSmedia事件欧州司法裁判所裁定と著作権法23条1項、2項(公衆送信権、公衆伝達権)の関係が問題となります。

    著作権法23条1項、2項(公衆送信権、公衆伝達権)は、WIPO著作権条約8条を基に整備、改正が進められてきました。WIPO著作権条約8条は、下記の通り定めます。

    WIPO Copyright Treaty Article 8
    Right of Communication to the PublicWithout prejudice to the provisions of Articles 11(1)(ii), 11bis(1)(i) and (ii), 11ter(1)(ii), 14(1)(ii) and 14bis(1) of the Berne Convention, authors of literary and artistic works shall enjoy the exclusive right of authorizing any communication to the public of their works, by wire or wireless means, including the making available to the public of their works in such a way that members of the public may access these works from a place and at a time individually chosen by them.

    このように、WIPO著作権条約8条は、Right of Communication to the Publicには、 the making available to the public( of their works in such a way that members of the public may access these works from a place and at a time individually chosen by them)が含まれると定めています。この規定を受けて、欧州著作権指令3条1項は、下記のとおり定めます。

    Directive 2001/29/EC of the European Parliament and of the Council of 22 May 2001 on the harmonisation of certain aspects of copyright and related rights in the information society Article 3
    Right of communication to the public of works and right of making available to the public other subject-matter1. Member States shall provide authors with the exclusive right to authorise or prohibit any communication to the public of their works, by wire or wireless means, including the making available to the public of their works in such a way that members of the public may access them from a place and at a time individually chosen by them.

    このように、欧州著作権指令3条1項は、表題においてRight of communication to the public of works and right of making available to the public other subject-matterと定め本文においてやはり、 communication to the publicには the making available to the public( of their works in such a way that members of the public may access them from a place and at a time individually chosen by them)が含まれると規定しています。

    GSmedia事件欧州司法裁判所裁定は、オランダ最高裁判所からの回付に対して、この欧州著作権指令3条1項に定められたRight of making available to the publicを含んだRight of communication to the publicについて、ハイパーリンクが含まれる場合があると判示しました。

    ところで、日本の著作権法23条1項及び2項が上記WIPO著作権条約8条などの強い影響を受けて規定が整備されてきた経緯があるのは前述のとおりです。そうすると、親元を同じにする欧州著作権指令3条1項について判断したGSmedia事件の判断は、日本の著作権法の解釈にも、無関係とはいえないかもしれません。

    もちろん、日本語で法制化する過程で、日本の公衆送信権、送信可能化権、公衆伝達権は、WIPO著作権条約8条との関係で、WIPO著作権条約8条と欧州著作権指令3条1項との間に存在するほどの類似性を喪失しています。しかし、条約優先の原則(著作権法5条)に鑑みても、また、WIPO著作権条約8条を基に本邦著作権法23条1項及び2項が整備されてきた過程に鑑みても、GSmedia事件の判断に一定程度配慮した解釈態度が穏当とも言い得ます。

    その意味で、一般的にリンクは著作権を侵害しないとされてきた本邦法解釈にも、少しずつ変化の時が訪れているのかもしれません。

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