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出願審査

1-1.出願審査:方式審査:出願に方式不備がないかの審査がされることになります。不備があれば補正を命じ、補正されなければ却下されることになります。もっとも、補正できない不備があれば、即座に却下することもできます。却下に対する不服申し立ては、異議申立前置主義が採用されています。

1-2.実体審査:その後、権利の付与前に実体審査を経ることになります(審査主義)。

1-3.審査請求:審査は審査請求を待って開始されます。出願人が特許権の付与を望まない事例を選別するためです。審査請求は出願後3年以内であれば「誰でも」、請求できます。請求が3年内になければ、出願は取り下げられることになります。

1-4.拒絶理由通知:審査官は拒絶理由がなければ特許権を付与するが、拒絶理由を発見すれば、拒絶理由を通知します。この通知により、出願人には、意見書の提出、補正、分割出願、出願変更などを行い対処する機会が付与されることになります。

補正

2-1.補正:出願人は自発的にまたは、命令を受けて補正を行います。補正により、出願書類は遡って補充、訂正されることになります。補正は手続補正書、ないし誤訳訂正書の提出によります。

2-2.補正の時間的制限:補正は最初の拒絶理由通知を受けたあと、60日以内(在外であれば3ヶ月)に限り許されます。拒絶理由通知により、補正の機会を付与する代わりに、時間制限をおいて、手続きを円滑に進める趣旨です。また、最初の拒絶理由通知に対する対応に対して通知された拒絶理由通知(最後の拒絶理由通知)に対応する期間を付与するため、最後の拒絶理由通知により、さらに補正期間が延長される場合があります。もっとも、補正が許される内容は限定されます(特許法17条の2第5項かっこ書参照)。また、特許法48条の7の規定による通知を受けた場合も、同様です。なお、拒絶理由通知がされない場合、査定謄本送達前であれば、いつでも補正ができます。

2-3.補正の内容的制限:補正は、出願時に遡るため、補正の範囲は、出願時の書類に記載された事項に限定されます。この場合、出願時の明細書に記載されている事項のみならず、記載されているに等しい事項の補正も許容されます。すなわち、明細書記載の発明を、クレームに追加することも許されます。もっとも、拒絶理由通知後は、拒絶理由通知の元となった審査を無駄にしないため、クレームの補正は、発明の単一性を満たす限りに限定されます。したがって、拒絶理由通知後は、クレームを明細書に記載されていても、まったく異なる発明に変更することはできません。さらに、最後の拒絶理由通知後は、審査を無駄にしない要請が高まり、補正の機会もすでに付与されているため、さらに補正の範囲は限定されます。すなわち、請求項の削除、クレームの縮減(拡張ができなくなる)、誤記の訂正、最後の拒絶理由通知記載の事由に対する釈明に限られます。さらに、クレームが縮減された場合、縮減後のクレームも、独立して特許を受けうるものでなければなりません。

2-4:補正の内容制限違反は拒絶事由となり、拒絶理由が通知されることになります。もっとも、一度補正の違法が看過されて権利が付与されれば、新規事項の追加禁止に反する場合以外、無効事由とされません。手続きの迅速を保護する趣旨です。これに対して、補正をすることも可能です。もっとも、補正の違法に対する補正は一度限りであり、最後の拒絶理由通知に対する補正に違法があれば、補正は却下されることになります。補正が却下されれば、却下に対して不服を申し立てることはできません。したがって、出願本体の拒絶査定に対する不服申し立ての中で、争うしかないことなります。

出願公開

3-1:出願公開:出願された発明は迅速に公開され、公共の利益に使われるべきです。したがって、出願から1年6ヶ月後、審査状況ないし審査請求の有無にかかわらず、出願された発明(出願が取り下げられ、放棄され、却下され、拒絶されるなど、すでに係属していないものは除かれる。)は公開されます。なお、1年6日月より前に公開されることを請求することも可能です。出願公開を請求した場合、取り下げは許されません。

3-2.補償金請求権:出願公開後、特許権付与までの間に、特許公開の対価の谷間が生じることになります。この谷間を埋める制度が、保証金請求権制度です。すなわち、出願公開を要件として、出願人が発明実施者に対して一定の債権を有するにいたります。もっとも、いまだ権利が付与されていない発明について、保障請求権を発生させることは、実施者にとって不意打ちとなりかねません。したがって、請求権者からの警告が、保障請求権発生の要件とされます。もっとも、実施者を悪意に陥れるための警告であるから、実施者がもとより悪意であれば、警告は不要です。

3-3.補正と警告:警告後、補正によりクレームの範囲が変更された場合、再度の警告が必要か、解釈が必要な事項です。この点、警告の趣旨は実施者の不意打ち防止にあります。したがって、クレームが拡張され、警告された範囲より広い範囲に補償請求権が及ぶ場合は再度の警告が必要と思料されます。しかし、クレームが縮減され、警告された発明より狭い範囲にしか、補償請求権が生じない場合は、不意打ちのおそれはなく、再度の警告は不要と解されます(最判昭和63年7月19日-アースベルト事件)。

3-4.補償請求権の行使:保障請求権は、特許権の設定登録後でなければ行使できません。特許権付与後でなければ、請求を認めた後、特許権を付与できない場合、複雑な求償関係を生じてしまうからです。また、特許権が付与されても、無効事由がある場合、補償請求権行使に対して、特許無効を抗弁とできます。また、先使用などの、特許権に対する抗弁事由はすべて、主張可能と解されます。なお、補償金請求権は特許権付与までの谷間を埋める制度であり、特許権と権利が重複する期間は制度趣旨上生じえません。したがって、補償金請求権の行使は、特許権をなんら制限することはありません。もっとも、補償請求権支払われた製品は消尽を引き起こし、特許権付与後の譲渡に特許権侵害を構成しないなど、特許権の講師にまったく影響を与えないものではありません。補償請求権の法的性質は法が特に創設した特別の権利と解すべきです。補償請求権は、出願人が設定登録より前に発明の実施および実施者を知っていたときは、設定登録後3年で消滅します。

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