iTやコンテンツの法律・知財問題を解決するリーガルサービス提供を重視しています

著作権法21条は、「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する」と定めます。
複製「権」というと、著作物を複製する権利を付与されたように捉えがちですが、著作権法が存在しない状態では誰しもがあらゆる著作物を自由に利用することができます。
著作権法が著作権者に与えているのは、複製する権利と言うより複製を排他的に独占する権利ということができます。
つまり、複製権とは、自分が著作物を複製できる権利であると同時に、他者に著作物を複製することを禁止できる権利ということになります。

このように、著作権は、権利者以外の著作物の複製を禁止しており、著作権者は第三者に対して権利使用を許諾(ライセンス)することもできますし,許諾を得ずに複製する者に対して法的サンクションを発動していくことも認められています。では「複製」とはどういった行為を指すのでしょうか。
著作権法2条1項15号柱書は、複製とは「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする」と規定しています。そして同号イ号は、脚本その他これに類する演劇用の著作物については、複製に「当該著作物の上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画すること」を含むと規定しています。また、同号ロ号は、建築の著作物については複製に「建築に関する図面に従つて建築物を完成すること」と含むと規定しています。
このように、「複製」とは、著作物を「有形的に再製することをいい」ます。
録音とは、音を物に固定することだけでなく、固定物を増製することを言います(著作権法2条1項13号)。録画とは、影像を連続して物に固定すること、又はその固定物を増製することを言います(同14号)。

アッセンブリ語で書かれたプログラムの機械語での保存

アッセンブリ言語で記述されたプログラムを、機械語に変換して保存する行為は、下級審判例上複製行為に当たると判断されています。

 昭和57年12月 6日東京地裁請求一部認容判決(昭54(ワ)10867号 損害賠償請求事件 〔スペース・インベーダー・パート2事件〕)

 

〈証拠〉によれば、本件機械のコンピューター・システムのROMに収納されている本件オブジェクトプログラムは、本件プログラムに用いられている記号語(アッセンブリ言語)を、開発用コンピューター等を用いて、コンピューターが解読できる機械語(本件の場合二個の一六進数を単位として表現される。)に変換した上、これを電気信号の形で本件機械のROMの記憶素子に固定して収納されていること、右記号語から機械語への変換は、右両言語が一対一の対応関係にあるため機械的な置き換えによつて可能であり、そこに何ら別個の著作物たるプログラムを創作する行為は介在しないこと、このROMに電気信号の形で固定して収納されている本件オブジェクトプログラムは、ロムライター等の複製用具を用いて、他のROMに電気信号の形で収納することができるものであり、訴外電商サービスらは、右の手段で本件オブジェクトプログラムを他のゲームマシンのROMに収納したこと、そしてROMは、プログラムを収納すると、一定の操作によつてこれを消去しない限り、プログラムを記憶し続け、右ROM内の情報(プログラム)はコンピューター・システムの電源スイッチが入ると中央演算装置(CPU)によつて読みとられ、CPUが順次その命令を実行し、ゲームマシンの受像機面上に本件ゲームの内容を映し出すものであることが認められる。
右事実によれば、本件オブジェクトプログラムは本件プログラムの複製物に当たり、訴外電商サービスらの本件オブジェクトプログラムを他のROMに収納した行為は、本件プログラムの複製物から更に複製物を作出したことに当たるから著作物である本件プログラムを有形的に再製するものとして複製に該当する。
そして、被告会社が注文を受けた顧客のゲームマシンのコンピューター・システムの基板を取り外して、これを訴外電商サービスらに持ち込み、右基板に取り付けられたROM又は必要に応じて追加したROMに本件オブジェクトプログラムを収納せしめた行為は、右訴外人らを被告会社のいわば手足として使用したもので、被告会社自身が本件プログラムの複製行為をしたものと評価できる。
右収納行為をした当時被告渡辺が被告会社の代表取締役であつたことは当事間に争いがなく、〈証拠〉によれば、被告渡辺は、昭和五四年八月ころ、原告が当時新製品として発売した本件機械の定価が五〇万円を超えており、ゲームマシンを設置ないし賃貸している業者が既存のゲームマシンを安価に本件機械に改造することを希望していたことから、その改造を計画し前記の複製行為をしたことが認められる。
右事実によれば、被告会社が右複製行為をするにつき、被告会社代表取締役であつた被告渡辺は本件プログラムが原告あるいはその他第三者の作成にかかるものであることを知り、又は少なくとも過失によつてこれを知らなかつたことが認められるから、右複製行為は故意又は過失によつてされたものというべく、被告らは不真正連帯の関係で、右不法行為によつて原告が被つた損害を賠償すべき義務がある。被告らは、本件プログラムが著作物であり、その複製に原告の許諾が必要であることを当時知らなかつた旨主張するけれども、右は法の不知というべく、被告らの右賠償責任の成立に消長を来たさない。

TOP