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同一性保持権

同一性保持権の内容

著作権法20条1項は、「著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする」と定めます。

同一性保持権は、著作者以外が著作者の「意に反して…改変」を行う行為を禁圧します(著作権法20条1項)。

「意に反して」は、文字通り著作者の意図に反して、著作物の同一性に変更を加える行為を指します。言い換えれば、著作者が完全に同意しているのであればあらゆる改変も同一性保持権の侵害は導かないことになります。

改変行為

これに対して、「改変」は、どのような行為を指しているのでしょうか。「平成10年 7月17日最高裁第二小法廷上告棄却判決(平6(オ)1082号反論文掲載等請求(雑誌「諸君!」)事件上告審)」は、同一性を保持する権利(以下「同一性保持権」という。)を侵害する行為について下記のとおり述べています。

著作権法二〇条に規定する著作者が著作物の同一性を保持する権利(以下「同一性保持権」という。)を侵害する行為とは、他人の著作物における表現形式上の本質的な特徴を維持しつつその外面的な表現形式に改変を加える行為をいい、他人の著作物を素材として利用しても、その表現形式上の本質的な特徴を感得させないような態様においてこれを利用する行為は、原著作物の同一性保持権を侵害しないと解すべきである(昭和五一年(オ)第九二三号同五五年三月二八日第三小法廷判決・民集三四巻三号二四四頁参照)。

また、上記裁判例で引用されている「昭和55年 3月28日最高裁第三小法廷原判決破棄差戻判決(昭51(オ)923号 損害賠償請求事件〔パロディ写真事件〕上告審)」は、下記の通り述べます。

 ところで、本件写真は、右のように本件モンタージュ写真に取り込み利用されているのであるが、利用されている本件写真の部分(以下「本件写真部分」という。)は、右改変の結果としてその外面的な表現形式の点において本件写真自体と同一ではなくなつたものの、本件写真の本質的な特徴を形成する雪の斜面を前記のようなシュプールを描いて滑降して来た六名のスキーヤーの部分及び山岳風景部分中、前者についてはその全部及び後者についてはなおその特徴をとどめるに足りる部分からなるものであるから、本件写真における表現形式上の本質的な特徴は、本件写真部分自体によつてもこれを感得することができるものである。そして、本件モンタージュ写真は、これを一瞥しただけで本件写真部分にスノータイヤの写真を付加することにより作成されたものであることを看取しうるものであるから、前記のようにシュプールを右タイヤの痕跡に見立て、シュプールの起点にあたる部分に巨大なスノータイヤ一個を配することによつて本件写真部分とタイヤとが相合して非現実的な世界を表現し、現実的な世界を表現する本件写真とは別個の思想、感情を表現するに至つているものであると見るとしても、なお本件モンタージュ写真から本件写真における本質的な特徴自体を直接感得することは十分できるものである。そうすると、本件写真の本質的な特徴は、本件写真部分が本件モンタージュ写真のなかに一体的に取り込み利用されている状態においてもそれ自体を直接感得しうるものであることが明らかであるから、被上告人のした前記のような本件写真の利用は、上告人羽本件写真の著作者として保有する本件写真についての同一性保持権を侵害する改変であるといわなければならない。

このように、改変行為とは、「他人の著作物における表現形式上の本質的な特徴を維持しつつその外面的な表現形式に改変を加える行為」をいうものと解されています。

ときめきメモリアル事件控訴審

平成11年 4月27日大阪高裁原判決破棄請求一部認容判決(平9(ネ)3587号損害賠償等請求控訴事件 〔ときめきメモリアル著作者人格権侵害訴訟・控訴審〕 )は、改変行為を詳細に検討しておりとても参考になります。特に表現形式ではなく表現の内容の改変を侵害と評価している記述部分が裁判所の改変行為の理解の仕方を知るうえでとても興味深い判決と言えます。当該判決は上告審でも是認されています。
以下、判決のうち、改変部分についての判示部分を抜粋しました。

 二 本件メモリーカードによる改変
1 本件メモリーカードの内容
被告が輸入し日本国内で販売した本件メモリーカードは、データの記憶単位であるブロックの1ないし13に、それぞれ本件ゲームソフトで使用される九種類のパラメータがデータとして収められたものであり、プレイヤーは、本件ゲームソフトのプログラムを実行するに当たり、本件メモリーカードの任意のブロック(プレイヤーが愛の告白を受けたいと希望する女生徒に関するブロック)内のデータをゲーム機のハードウエアに読み込んで、そのデータを利用することができる。
2 本件メモリーカードの使用によるゲーム展開の変化
《証拠略》によれば、本件メモリーカードを使用すれば、本件ゲームソフトのゲーム展開が次のように変化することが認められる。
(一) 本件メモリーカードのブロック1ないし11に収められているデータを使用すると、本来、一九九五年四月四日の高校入学の時点における初期値が体調100・文系40・理系40・芸術40・運動40・雑学32・容姿60・根性5・ストレス0として設定されている九種類のパラメータの数値が、入学後一週間足らずの一九九五年四月九日の時点において、例えばブロック1のデータでは、「藤崎詩織」に合ったステイタスでゲームをプレイできるとして、ストレス0以外はすべて999という形で与えられ、ブロック2のデータでは、「紐緒結奈」に合ったステイタスでゲームをプレイできるとして、体調99・文系0・理系999・芸術0・運動0・雑学0・容姿999・根性0・ストレス0という形で与えられる。
(二) 本件メモリーカードのブロック12・13に収められているデータを使用すると、ゲームのスタート時点が高校の卒業(一九九八年三月一日)間際の一九九八年二月二二日(ブロック12)又は同月二五日(ブロック13)に飛び、その時点において、九種類のパラメータが、ブロック12のデータでは、「伊集院レイ」の「エンディング直前データ」として、体調999・文系998・理系995・芸術998・運動998・雑学873・容姿849・根性973・ストレス0という形で与えられ、ブロック13のデータでは、「藤崎詩織」の「エンディング直前データ」として、体調999・文系998・理系998・芸術998・運動997・雑学894・容姿868・根性987・ストレス0という形で与えられる。しかも、画面上には表示されないのでプレイヤーには見えないが、憧れの女生徒(「伊集院レイ」又は「藤崎詩織」)から愛の告白を受けるために必要な項目である「デートの回数・中身、学校行事(テスト、体育祭、文化祭等)への取組みの中身、健康状態(ノイローゼや病気のチェック)、同伴下校やプレゼントの中身、他の女生徒の評価などの諸要素」について、隠しパラメータの数値を満たすようにデータが収められており、残りの一週間を適当にプレイすれば必ず憧れの女生徒(「伊集院レイ」又は「藤崎詩織」)から愛の告白を受けること(ハッピーエンディング)ができるようになっている。
(三) しかし、本件ゲームソフトの本来のゲーム展開では、前記のように、プレイヤーの初期値が低く設定されている上、あるパラメータが上昇すれば他のパラメータが下降するように九つの表パラメータの変化が連動する形で設定されているため、プレイヤーが平日・休日に最善のコマンドを常に選択し続け、すべてのコマンドが成功し、かつ常に健康で病気・怪我・ノイローゼにならないとして、最も効率よくパラメータの数値を上昇できたとしても、その最高値は特定少数のパラメータを999というような高数値にするのが限度で、他の多数のパラメータをも同時に900を超え、あるいは900近い数値にすることは不可能である。
従って、前記(一)(二)のように九つのパラメータの殆どを高数値とすることができるのは、本件メモリーカードに前もって保存してある外部データをゲーム機のRAMに書き込む方法によってのみ可能で、プレイヤーの主体的な操作のみでは達成することはできない。
また、本来であれば、ゲームのスタート時点においてプレイヤーの名前(姓・名・あだ名)を入力することになるところ、本件メモリーカードのブロック1ないし11のデータを使用すると、プレイヤーの名前が「ときメモ」、あだ名が「コナミ」として既に設定されているため、プレイヤー自身の名前やあだ名が表示されず、本件ゲームソフトが予定しているプレイヤーに対する呼び掛けのインパクトが希薄化され、女生徒とプレイヤーとの対話の直接性が毀損されているということができる。
3 ゲーム展開の変化と本件ゲームソフトの改変
(一) 人物設定の改変とそれによる「ストーリー」の改変
本件ゲームソフトにおいて、「藤崎詩織」その他の女生徒のキャラクターとともに、主人公(プレイヤー)の人物像も物語の展開上重要な構成要素であると解すべきことは前記のとおりである。
ところが、本件メモリーカードを使用することによって、例えば、ブロック1のデータでは、「藤崎詩織」に合ったステイタスでゲームをプレイできるとして、主人公の表パラメータが高校入学直後の時点でストレス0以外はすべて999という高数値で与えられ、また、ブロック12・13のデータでは、高校卒業間近の時点で、「伊集院レイ」に関するデータが、体調999・文系998・理系995・芸術998・運動998・雑学873・容姿849・根性973・ストレス0という高数値(ブロック12)で、「藤崎詩織」に関するデータが、体調999・文系998・理系998・芸術998・運動997・雑学894・容姿868・根性987・ストレス0という高数値(ブロック13)で与えられるのであるから、これらの高数値によって表される主人公の人物像は、学力・運動ともに最優秀で芸術性にも極めて優れ容姿も抜群という、飛び抜けて高い能力を有する高校生の姿である。
しかるに、本件ゲームソフトで設定された主人公の人物像は、高校入学直後は平凡な普通の高校生であり、最大限の努力によって卒業間近の時点で達成できる能力も特定少数の分野のみ高数値となるに止まるのであるから、こうした主人公の人物像は本件メモリーカードの使用によって明らかに改変されたものといわなければならない。
そして、前記のとおり、本件ゲームソフトにおいては、主人公の能力値が初期設定の低い数値であることを前提に、各時点でのコマンドの選択により達成しうる最大限の数値の範囲内でその後のストーリーの展開が図られているものであるから、後記の「女生徒との最初の出会いの時期」の改変に見られるように、当初から主人公の能力値が高数値に置き換えられることによって、プレイヤーがストーリーの展開の過程において入力するコマンドの数値を無効化し、右のストーリーが本来予定された範囲を超えて展開されることとなり、この点で主人公の人物像の改変がストーリーの改変をももたらすものということができる。
(二) 「女生徒との最初の出会いの時期」の改変
本件ゲームソフトでは、主人公の能力値が低い段階から物語がスタートし、表パラメータの数値が一定値に達したとき初めてそれに応じた女生徒が登場する設定となっているから、主人公の能力が一定値に達する時期までは女生徒が登場しない前提でストーリーの展開が図られているものということができる。
しかるに、本件メモリーカードのブロック1ないし11によれば、高校入学直後の主人公の能力値が極めて高いものに改変される結果、入学当初から本来はあり得ない女生徒が登場することになり、この点でもストーリー展開に顕著な改変があるといわなければならない。
(三) 「ストーリー」の削除
原告は、本件メモリーカードのブロック12、13により、高校生活三年間を通じて展開されるべき本件ゲームソフトの「ストーリー」がほぼ全部削られ、いきなり卒業一週間前に飛んでしまうのは、ゲーム制作者が設定したゲームの「ストーリー」という基本的な内容に関する重大な改変にほかならないと主張する。
原告の右主張は、主人公が高校入学直後の初期値からスタートし三年間という時を経て順次成長する過程を省略することが「ストーリー」の改変に当たるというものである。
しかし、本件メモリーカードのブロック12、13により、卒業一週間前の時点で主人公の能力値を本来であればあり得ない高数値に置き換えることはその時点での人物像の改変に他ならず、それによりその後のストーリーの展開に改変をもたらすものであることは、ブロック1~11におけると同様である。
従って、右により改変されるのは数値が置き換えられた後の展開であって、それ以前のストーリーが削除改変されるものではない。
(四) 以上の他、原告は、本件メモリーカードにより「ゲームバランス」や「インタラクティブ性」についても改変がされたと主張するが、原告のいう「ゲームバランス」や「インタラクティブ性」はシミュレーションゲームの構想の側面であって、それ自体で著作物性を有するものでないことは前記のとおりであるから、仮にこれを変更したとしてもそのこと自体は著作権の侵害ということはできず、この点についての原告の主張は理由がない。
(五) 被告は、シミュレーションゲームにおいては、プレイヤーの参加があって初めてストーリーが展開され、展開の幅も固定されておらず、第三者が展開の幅を認識することもできないから、本件メモリーカードを使用して主人公の能力値を高数値に置き換えたとしても、本件ゲームソフトのストーリーを改変するものではないと主張する。
本件ゲームソフトにおいては、プレイヤーの参加をまって初めてゲームが展開され、プレイヤーの選択によってストーリーも種々様々に変化して展開される点で、通常の言語や映画の著作物のようにストーリーが固定されているものとは異なることは被告主張のとおりである。
しかし、本件ゲームソフトにおいても、前記のように、登場人物(主として女生徒)の数や登場の条件は限定され、主人公も能力値が初期設定で特定されていて、それを前提に物語が始まるのであるから、ストーリーの始まりは固定されているものということができ、その後、主人公の能力値と女生徒に関する隠しパラメータの変化に応じてストーリーも具体的に展開するものであるから、ストーリーの選択に幅があるとはいえ、一定の条件下に一定の範囲内で展開するという限定が設けられていることは否定できない。
従って、主人公の能力値をあり得ない高数値に変更すれば、それが高校生活中のいずれの時点についてされたかを問わず、それに応じた展開の条件も当然に変更され、本来の条件を離れた特異なストーリーの展開を示すことになるもので、その点においてストーリーの改変に当たるものといわなければならない。
本件ゲームソフトにおけるプレイは、長時間に及ぶものであるため、市販のメモリーカードを利用して、プレイヤーがゲーム操作によって蓄積した結果を中間的に保存し、また任意の時間に右メモリーカードに記録したゲームデータをプレイステーションに呼び込み、従前のゲームの続きを行うことが許容されている。
しかし、市販のメモリーカードに保存されるデータは、あくまでも本件ゲームソフトの制作者が想定した枠内のゲーム展開の結果のみであり、最初からのゲーム展開のデータに限られ、本件ゲームによって作成されたデータ以外のデータの呼び込みを許容しているものではなく、また、最初からのゲーム結果の省略ができるものでもない。
市販カードの使用が許容されるといっても、その意味は右の限度のものであって、市販カードの使用が許容されているということのみから、本件メモリーカードが許容される範囲内のものであるということはできない。
なお、予め予定されたゲーム展開の幅が第三者に客観的に認識できないものであっても、著作権の成立を妨げるものではなく、そのことが、本件メモリーカードの作成を許容する理由とはならない。また本件メモリーカードを使用してもプログラムが停止したり暴走したりすることなく正常にゲームを進行することができるということも、本件ゲームソフトが許容する範囲であることの根拠とはならない。
なお、本件ゲームソフトのプログラム中には一定以上の数値を読み込むことを禁止するチェックルーティンは組み込まれていないけれども、そのことが本件著作物の同一性保持権侵害の成否を左右するものでもない。

ときめきメモリアル事件上告審

 平成13年 2月13日最高裁第三小法廷上告棄却判決(平11(受)955号損害賠償等請求事件 〔ときめきメモリアル著作者人格権侵害訴訟・上告審〕)

本件ゲームソフトの影像は、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものとして、著作権法二条一項一号にいう著作物ということができるものであるところ、前記事実関係の下においては、本件メモリーカードの使用は、本件ゲームソフトを改変し、被上告人の有する同一性保持権を侵害するものと解するのが相当である。けだし、本件ゲームソフトにおけるパラメータは、それによって主人公の人物像を表現するものであり、その変化に応じてストーリーが展開されるものであるところ、本件メモリーカードの使用によって、本件ゲームソフトにおいて設定されたパラメータによって表現される主人公の人物像が改変されるとともに、その結果、本件ゲームソフトのストーリーが本来予定された範囲を超えて展開され、ストーリーの改変をもたらすことになるからである。
以上と同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は独自の見解に立って原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。

同一性保持権の適用が除外される場合

著作権法20条2項は前項(20条1項)「の規定は、次の各号のいずれかに該当する改変については、適用しない」と定め、下記の場合同一性保持権が適用されないことを宣明しています。

①第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項又は第三十四条第一項の規定により著作物を利用する場合における用字又は用語の変更その他の改変で、学校教育の目的上やむを得ないと認められるもの(著作権法20条2項1号)

②  建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変(同項2号)

③  特定の電子計算機においては利用し得ないプログラムの著作物を当該電子計算機において利用し得るようにするため、又はプログラムの著作物を電子計算機においてより効果的に利用し得るようにするために必要な改変(同項3号)

④  前三号に掲げるもののほか、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変(同項4号)

 

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