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映画著作物における頒布権の国際消尽

映画の著作物以外の著作物については、譲渡権の国際的な消尽が規定されています(著作権法26条の2第2項5号)。

著作権法26条の2第1項
著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。以下この条において同じ。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において同じ。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。

同条2項
前項の規定は、著作物の原作品又は複製物で次の各号のいずれかに該当するものの譲渡による場合には、適用しない。

同項5号  国外において、前項に規定する権利に相当する権利を害することなく、又は同項に規定する権利に相当する権利を有する者若しくはその承諾を得た者により譲渡された著作物の原作品又は複製物

この国際的譲渡権消尽の効果で、原則的に映画の著作物以外の著作物について、還流輸入は適法と考えられます。しかし、レコードについては、還流防止の法改正が行われており、まさに今回のような日本から海外向けに輸出している商品を日本に逆輸入する行為は、レコードについては販売者の利益を侵害する場合、違法と特に規定されています(著作権法113条5項)。

これに対して、映画の著作物については、法的には頒布権消尽の規定が定められていません。国際消尽を含めた著作権法26条の2第2項に相当する消尽の規定自体が存在していません。

この点について、映画の著作物については消尽の効力が発生するのか、争われたケースがありました。ただし、映画の著作物についても頒布権の消尽を定めた最高裁判例(中古ゲームソフト事件上告審判例)が出され映画の著作物における国内消尽について、一応の決着をみたと考えられます。同判例は、映画の著作物の頒布権の消尽について、下記の通り述べています。

平成14年4月25日最高裁判所第一小法廷上告棄却判決(平成13(受)952著作権侵害行為差止請求事件)

特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が我が国の国内において当該特許に係る製品を譲渡した場合には、当該特許製品については特許権はその目的を達成したものとして消尽し、もはや特許権の効力は、当該特許製品を再譲渡する行為等には及ばないことは、当審の判例とするところであり(最高裁平成七年(オ)第一九八八号同九年七月一日第三小法廷判決・民集五一巻六号二二九九頁)、この理は、著作物又はその複製物を譲渡する場合にも、原則として妥当するというべきである。けだし、(ア) 著作権法による著作権者の権利の保護は、社会公共の利益との調和の下において実現されなければならないところ、(イ) 一般に、商品を譲渡する場合には、譲渡人は目的物について有する権利を譲受人に移転し、譲受人は譲渡人が有していた権利を取得するものであり、著作物又はその複製物が譲渡の目的物として市場での流通に置かれる場合にも、譲受人が当該目的物につき自由に再譲渡をすることができる権利を取得することを前提として、取引行為が行われるものであって、仮に、著作物又はその複製物について譲渡を行う都度著作権者の許諾を要するということになれば、市場における商品の自由な流通が阻害され、著作物又はその複製物の円滑な流通が妨げられて、かえって著作権者自身の利益を害することになるおそれがあり、ひいては「著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与する」(著作権法一条)という著作権法の目的にも反することになり、(ウ) 他方、著作権者は、著作物又はその複製物を自ら譲渡するに当たって譲渡代金を取得し、又はその利用を許諾するに当たって使用料を取得することができるのであるから、その代償を確保する機会は保障されているものということができ、著作権者又は許諾を受けた者から譲渡された著作物又はその複製物について、著作権者等が二重に利得を得ることを認める必要性は存在しないからである。

ただし、上記最高裁判例は、あくまで国内消尽を前提に判断した判例となります。つまり、国際消尽においては、最高裁法理で消尽が生じる理由として挙げられている「権利者に十分利益を確保する機会が与えられている点」が十分に満たされているか疑問も生じてくる部分です。外国で輸出している商品については、外国ではブランド力がなかったり、物価などの諸事情から安価に設定されている輸出用の価格で、消尽が生じるほど十分な利益確保の機会は与えられていないと判断される可能性もあり得るところです。このような点から、映画の著作物の頒布権の国際消尽については、明確な結論が出ていないとも捉え得るのです。
実際にも、「権利者に十分利益を確保する機会が与えられている」とは言えないという観点から、上記のレコードについての還流防止措置が著作権法上法制化されています。レコードについて、還流が防止されることとの均衡からも、映画の著作物の国際消尽については、消極的な判断が下る可能性が十分に認められます。

現に上記最高裁判例より前の下級審判例ですが、並行輸入を違法とした判例があります(101匹わんちゃん並行輸入事件)。

平成6年7月1日東京地方裁判所請求棄却判決(平成5年(ワ)4948号101匹ワンちゃん並行輸入事件)

本件ビデオカセットは、アメリカ合衆国で本件映画の著作権者の許諾を得て製造販売されたものであるから、同国著作権法一〇九条(a)項あるいはファーストセールドクトリンの法理の適用により、同国の国内においてはその後の頒布、流通に制限はなかったものと解されるが、右許諾が我が国内での頒布を含んだ許諾で、我が国における頒布も予測した対価が支払われていることを認めるに足りる証拠はない以上、アメリカ合衆国における前記許諾を理由に、並行輸入された本件ビデオカセットの頒布が我が国における頒布権を侵害しないとすることはできない。
右のように解することは、並行輸入される映画のビデオカセットの通商を制限し、同じ映画のビデオカセットの価格競争を限られたものとし、我が国内でその映画のビデオカセットに接することのできる時期が他の国よりも遅くなり、我が国内で通常接することのできる映画のビデオカセットの版が限定される等の状況を一部においてもたらすことも予想されるが、それらの状況が著作権者の権利の保護を図るあまり文化的所産の公正な利用に対する配慮を欠いたことになるとも、文化の発展に寄与しない結果を生ずるものとも解されない。

このように映画の著作物の還流輸入における国際消尽については、不透明な部分があり、違法と判断される可能性も十分認められる行為と評価できます。

著作権法上、映画の著作物の還流輸入については、明確に違法と判断した判例はないものの、違法とされる可能性も十分認められることから、外国でDVDを購入して日本で販売する行為自体、違法と判断されるリスクが十分にあることになります。

 

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