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著作物の引用利用

引用について定めた著作権法32条1項は、下記のとおり定めます。

著作権法32条1項

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

利用とは

著作権法32条1項で適法化されるのは、利用行為です。この「利用」行為とは、著作物の複製行為(著作権法21条)、上演し又は演奏する行為(同22条)、上映する行為(同22条の2)、公衆送信を行う行為(同23条1項)、公に伝達する行為(同23条2項)、口述する行為(同24条)、原作品により展示する行為(同25条)、映画の著作物の複製物を頒布する行為(同26条1項)、映画の著作物に複製されている著作物を、当該映画の著作物の複製物によって頒布する行為(同26条2項)、著作物の原作品又は複製物を譲渡する行為(同26条の2第1項)、著作物の複製物を貸与する行為(同26条の3)、翻訳以外の翻案行為(同27条、なお後掲「血液型と性格の社会史事件請求棄却判決」)などです。なお、翻訳行為は、著作権法43条2号により適法化されます。

ただし、上記の利用行為のうち、「引用して」利用しているものだけが適法とされます。つまり、複製行為が許されるのではなく、引用複製行為が許されることになります。また、演奏行為が許されるのではなく引用演奏行為が許されるに過ぎないことになります。さらに、例示すれば複製物の譲渡が許されるのではなく、引用のうえで複製した複製物の譲渡が許されるに過ぎません。

そこで問題になるのが、「引用」とは何か、という問題です。

「引用」して利用とは

「引用して利用する」とは、上記の利用行為が、被引用著作物の引用に該当している必要があることはすでに述べました。では、この引用とはどのような行為を指すのでしょうか。東京高等裁判所昭和60年10月17日原判決破棄自判判決(昭和59年(ネ)第2293号・藤田嗣治事件控訴審)は、「引用」について、次のとおり述べています。

「「引用」とは、報道、批評、研究等の目的で他人の著作物の全部又は一部を自己の著作物中に採録することであり、また「公正な慣行に合致し」、かつ、「引用の目的上正当な範囲内で行なわれる」ことという要件は、著作権の保護を全うしつつ、社会の文化的所産としての著作物の公正な利用を可能ならしめようとする同条の規定の趣旨に鑑みれば、全体としての著作物において、その表現形式上、引用して利用する側の著作物と引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができること及び右両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると認められることを要すると解すべきである」。

つまり、「全体としての著作物において、その表現形式上、引用して利用する側の著作物と引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができること」及び、「右両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると認められることを要する」と述べています。

この要件を①明瞭区別性、及び②主従関係と言います。

さらに同判例は、②主従関係について、「主従関係は、両著作物の関係を、引用の目的、両著作物のそれぞれの性質、内容及び分量並びに被引用著作物の採録の方法、態様などの諸点に亘つて確定した事実関係に基づき、かつ、当該著作物が想定する読者の一般的観念に照らし、引用著作物が全体の中で主体性を保持し、被引用著作物が引用著作物の内容を補足説明し、あるいはその例証、参考資料を提供するなど引用著作物に対し付従的な性質を有しているにすぎないと認められるかどうかを判断して決すべきものであ」る。と述べています。

公正な慣行・目的上正当な範囲の要件

このように、著作物の利用行為が引用的利用行為と評価できるとしても、さらに、引用利用行為のうち、公正な慣行に合致し、目的上正当な範囲内の引用利用だけが適法とされます。

また、前提としてそもそも引用には「目的」が必要とされているとも解し得ます。つまり、いくら形式的に引用の要件を満たしても、無目的に漫然と被引用著作物を引いているような場合はそもそも、適法とされない場合があり得ます。

公正な慣行は、その時代の、引用著作物や被引用著作物の利用形態、掲載媒体、さらに社会の慣行や通念から決まってきますし、目的上正当な範囲の利用について、引用著作物や被引用著作物の関係や引用の態様などが大きな意味を持つものと考えられます。

このように、引用要件を満たすか否かは、断定的に判断できない部分がどうしても出てきてしまいます。

出所の明示

さらに引用利用する場合は出所の明示が必須となります(著作権法48条1項1号)。出所の明示という表現から気づきにくいかもしれませんが、著作者名の表示が義務付けられることには注意が必要です(同条2項)。

出所の明示は、翻訳による引用利用(著作権法43条2号)の際にも求められます(同法48条3項)。

なお、いくら引用の要件を満たしても、未公表の著作物を引用利用した場合、別途公表権侵害(著作権法18条1項)の虞があることは別論です。

絵画鑑定書事件控訴審判決

知的財産高等裁判所平成22年10月13日判決(平成22年(ネ)第10052号・絵画鑑定書事件)は、引用の要件を詳細に述べており、従来の引用要件と異なる部分もあり、注目されます。以下、同判決書からの抜粋です。

 (1) 引用の適法性の要件
ア 著作権法は、著作物等の文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とするものであるが(同法1条)、その目的から、著作者の権利の内容として、著作者人格権(同法第2章第3節第2款)、著作権(同第3款)などについて規定するだけでなく、著作権の制限(同第5款)について規定する。その制限の1つとして、公表された著作物は、公正な慣行に合致し、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で引用して利用することができると規定されているところ(同法32条1項)、他人の著作物を引用して利用することが許されるためには、引用して利用する方法や態様が公正な慣行に合致したものであり、かつ、引用の目的との関係で正当な範囲内、すなわち、社会通念に照らして合理的な範囲内のものであることが必要であり、著作権法の上記目的をも念頭に置くと、引用としての利用に当たるか否かの判断においては、他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合考慮されなければならない。
イ しかるところ、控訴人は、その作製した本件各鑑定証書に添付するために本件各絵画の縮小カラーコピーを作製して、これを複製したものであるから、その複製が引用としての利用として著作権法上で適法とされるためには、控訴人が本件各絵画を複製してこれを利用した方法や態様について、上記の諸点が検討されなければならない。
(2) 要件の充足性の有無
ア そこで、前記見地から、本件各鑑定証書に本件各絵画を複製した本件各コピーを添付したことが著作権法32条にいう引用としての利用として許されるか否かについて検討すると、本件各鑑定証書は、そこに本件各コピーが添付されている本件各絵画が真作であることを証する鑑定書であって、本件各鑑定証書に本件各コピーを添付したのは、その鑑定対象である絵画を特定し、かつ、当該鑑定証書の偽造を防ぐためであるところ、そのためには、一般的にみても、鑑定対象である絵画のカラーコピーを添付することが確実であって、添付の必要性・有用性も認められることに加え、著作物の鑑定業務が適正に行われることは、贋作の存在を排除し、著作物の価値を高め、著作権者等の権利の保護を図ることにもつながるものであることなどを併せ考慮すると、著作物の鑑定のために当該著作物の複製を利用することは、著作権法の規定する引用の目的に含まれるといわなければならない。
そして、本件各コピーは、いずれもホログラムシールを貼付した表面の鑑定証書の裏面に添付され、表裏一体のものとしてパウチラミネート加工されており、本件各コピー部分のみが分離して利用に供されることは考え難いこと、本件各鑑定証書は、本件各絵画の所有者の直接又は間接の依頼に基づき1部ずつ作製されたものであり、本件絵画と所在を共にすることが想定されており、本件各絵画と別に流通することも考え難いことに照らすと、本件各鑑定証書の作製に際して、本件各絵画を複製した本件各コピーを添付することは、その方法ないし態様としてみても、社会通念上、合理的な範囲内にとどまるものということができる。
しかも、以上の方法ないし態様であれば、本件各絵画の著作権を相続している被控訴人等の許諾なく本件各絵画を複製したカラーコピーが美術書等に添付されて頒布された場合などとは異なり、被控訴人等が本件各絵画の複製権を利用して経済的利益を得る機会が失われるなどということも考え難いのであって、以上を総合考慮すれば、控訴人が、本件各鑑定証書を作製するに際して、その裏面に本件各コピーを添付したことは、著作物を引用して鑑定する方法ないし態様において、その鑑定に求められる公正な慣行に合致したものということができ、かつ、その引用の目的上でも、正当な範囲内のものであるということができるというべきである。
イ この点につき、被控訴人は、著作権法32条1項における引用として適法とされるためには、利用する側が著作物であることが必要であると主張するが、「自己ノ著作物中ニ正当ノ範囲内ニ於テ節録引用スルコト」を要件としていた旧著作権法(明治32年法律第39号)30条1項2号とは異なり、現著作権法(昭和45年法律第48号)32条1項は、引用者が自己の著作物中で他人の著作物を引用した場合を要件として規定していないだけでなく、報道、批評、研究等の目的で他人の著作物を引用する場合において、正当な範囲内で利用されるものである限り、社会的に意義のあるものとして保護するのが現著作権法の趣旨でもあると解されることに照らすと、同法32条1項における引用として適法とされるためには、利用者が自己の著作物中で他人の著作物を利用した場合であることは要件でないと解されるべきものであって、本件各鑑定証書それ自体が著作物でないとしても、そのことから本件各鑑定証書に本件各コピーを添付してこれを利用したことが引用に当たるとした前記判断が妨げられるものではなく、被控訴人の主張を採用することはできない。
ウ なお、控訴人が本件各絵画の鑑定業務を行うこと自体は、何ら被控訴人の複製権を侵害するものではないから、本件各絵画の鑑定業務を行っている被控訴人がこれを独占できないことをもって、著作権者の正当な利益が害されたということができるものでないことはいうまでもない。
(3) 小括
したがって、控訴人が本件各鑑定証書を作製するに際してこれに添付するため本件各コピーを作製したことは、これが本件各絵画の複製に当たるとしても、著作権法32条1項の規定する引用として許されるものであったといわなければならない。

血液型と性格の社会史事件請求棄却判決

   1 著作権法三二条一項は、「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない。」と定める。これは、文化は先人の文化的所産を利用しながら発展してきたものであり、既存の著作物をそのまま利用して新たな著作物を作成することも実際に社会的に広く行われていて、文化の発展に寄与していることに鑑み、社会の利益と著作権者の権利との調整を図るために、所定の要件を満たす引用には、著作権が及ばないこととしたものである。その趣旨からすれば、ここにいう引用とは、報道、批評、研究等の目的で自己の著作物中に他人の著作物の全部又は一部を採録するものであって、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物を明瞭に区別して認識することができ、かつ、両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があるものをいうと解するのが相当である。
そして、右の要件を満たすような形で、他人の言語の著作物を新たな言語の著作物に引用して利用するような場合には、他人の著作物をその趣旨に忠実に要約して引用することも同項により許容されるものと解すべきである。その理由は次のとおりである。まず、著作権法三二条一項の解釈としても、引用が原著作物をそのまま使用する場合に限定されると解すべき根拠はないし、実際上も、新たな言語の著作物を創作する上で、他人の言語の著作物の全体あるいは相当広い範囲の趣旨を引用する必要のある場合があるが、その場合、それを原文のまま引用するのでは、引用の名の下に他人の著作物の全部又は広範な部分の複製を認めることになり、その著作権者の権利を侵害する程度が大きくなる結果となり、公正な慣行に合致するものとも、正当な範囲内のものともいえなくなるおそれがあること、また、引用される著作物が場合によっては、記述の対象が広範囲にわたっており、引用して利用しようとする者にとっては、一定の観点から要約したものを利用すれば足り、全文を引用するまでの必要はない場合があること、更に、原著作物の趣旨を正確に反映した文章で引用するためには、原文の一部を省略しながら切れ切れに引用することしか認めないよりも、むしろ原文の趣旨に忠実な要約による引用を認める方が妥当であるからである。そして、現実にもこのような要約による引用が社会的に広く行われていることは、証拠(乙四六ないし五〇、五二ないし六五、六八、七二、七四、七五)により認められるところである。
もっとも、著作権法四三条は、一号で、翻訳、編曲、変形又は翻案の方法により、同法三〇条一項又は三三条から三五条までの規定に従って利用することができるとし、二号で、翻訳の方法により、同法三二条(引用)等の規定に従って利用することができるとしている。そこで、他人の著作物を要約する場合には翻案に当たるものであり、同法四三条一号には同法三二条の規定に従って利用することは除外されており、二号では引用による利用ができる場合として翻訳の方法の方法による場合のみが定められていることから、要約による引用は許されないとの解釈も考えられるところである。しかしながら、同法四三条の趣旨に立ち戻って考えてみると、同条は、各著作権制限規定の立法趣旨とこれによる通常の利用形態を考慮するとともに、著作者の有する同法二七条、二八条の権利を必要以上に制限することのないよう、同法三〇条ないし四二条著作権の制限規定の類型毎に、同法二七条、二八条所定の翻訳、編曲、変形又は翻案の方法によって利用できる場合と翻訳によって利用できる場合とを別に定めたものであるが、二七条所定の方法のうち、各制限規定が定める場合において通常必要と考えられる行為を、翻訳、編曲、変形又は翻案の区分によって、それ以上細かく分けることなく挙げたものであると考えられる。そして、引用の場合には、音楽の著作物を編曲して引用したり、美術の著作物を変形して引用したり、あるいは、脚色又は映画化のように異種の表現類型へ変換したり、物語の時代や場所を変更する等典型的な翻案をした上で引用したりすることが必要な場合が通常考えられないことから、引用の場合許される他人の著作物の利用方法として、編曲、変形及び翻案をあえて挙げることをしなかったものと解され、要約による引用については、その必要性や著作者の権利との調整が検討されたことをうかがわせる証拠はない。このような同法四三条の趣旨を前提とすれば、要約による引用は、翻訳による引用よりも、一面では原著作物に近いのであり、これが広く一般に行われており、実際上要約による引用を認める方が妥当であることは前記のとおりであり、他人の言語の著作物をその趣旨に忠実に要約して同種の表現形式である言語の著作物に引用するような場合については、そもそも同法四三条二号の立法趣旨が念頭に置いている事例とは利用の必要性、著作者の権利侵害の程度を異にするものであり、同条二号には、翻案の一態様である要約によって利用する場合を含むものと解するのが相当である。
さらに、同法四三条の適用により、他人の著作物を翻訳、編曲、変形、翻案して利用することが認められる場合は、他人の著作物を改変して利用することは当然の前提とされているのであるから、著作者人格権の関係でも違法性のないものとすることが前提とされているものと解するのが相当であり、このような場合は、同法二〇条二項四号所定の「やむを得ないと認められる改変」として同一性保持権を侵害することにはならないものと解するのが相当である。

 

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