CONTENS

クリエイトする弁護士齋藤理央.comのコンテンツです。

違法に公衆送信される著作物のダウンロードの無制限の違法化(※1)を含んだ著作権法改正に関するパブリックコメントが募集されています。意見募集は2019年1月6日までとされています。

そこで、今回の静止画等ダウンロード違法化(※1)に関する法律的な枠組みを記事にしたいと思います。もしパブリックコメントもご検討されている方がいれば、参考にして頂ければ幸いです。

※1 なお、静止画等ダウンロード違法化という表現は正確でなく、違法に自動公衆送信された著作物のダウンロード無制限違法化と表現して良い改正内容かと理解しています。その意味でタイトルにも無制限違法化という表現を選択しました。

複製権(権利者以外の複製は禁止)

そもそも、著作権のうち、複製権という支分権が定められています(著作権法21条)。簡単に言えば、著作物をコピーすることを禁じた最も基本的な著作権という位置づけになります。著作権法は、著作権者か、著作権者から同意を得た者でない限り、著作物を複製することを禁止しています。そもそも、静止画も動画も音声も、すべて複製権者に無許諾で著作物を複製することは原則的に禁止されています。

複製とは

複製は著作物の本質的特徴を覚知するに足るものを有形的に再製する行為を指します。

電子データの複製とは

電子データは、複製も容易です。したがって、電子データについては単純に同一のデータ(電荷乃至磁場の状態で存在しPCに一定の挙動を実施させる情報。)をクローニングしただけでは複製に該当しないと整理されている場合があります。

例えば、電子データは基本的に、PC内のメモリー部(※1)でのデータのクローニング、ハードディスク内(※2)でもキャッシュ領域でのデータのクローニング(※3)を行っても、著作権法にいう「複製」に当たらないという見解も有力です。

なお、メモリー部でのデータのクローニングはPCの通電が失われることで一般的に電荷の状態で存在するデータも消失するため、有形性を伴わず複製に該当しないと説明しやすい部分です。

これに対して、通電状態が失われてもデータが消失しないハードディスク内のキャッシュ領域でのデータ保存について、複製に該当しないという法解釈には、疑問も示されているところです。そこで、PCハードディスクのキャッシュ領域へのデータの保存については、著作権法47条の8(平成30年改正後は47条の4第1項)により適法化されるという考え方もあります。

いずれにせよ、今回問題となっているのは、ハードディスク内でも、キャッシュ領域(他のデータが一定の容量に至った時に自動で消去される領域)外にデータをクローニングする場合です。ダウンロード無限定違法化の場面では、この、ハードディスク内でも、キャッシュ領域外にデータをクローニングする行為を指して「ダウンロード」と理解するのが正しいものと考えられます。

※1 ここでは、CPU内の一部記憶装置なども含み、一般的にPCが通電しなくなると自動的に消失する一般的に電荷の状態のデータを指しています。

※2 PCが通電しなくなっても消失しないハードディスク領域内の一般的に磁場の状態で存在するデータを指しています。

※3 プログレッシブダウンロードにおいてもキャッシュが残存することがあります。この場合、キャッシュ領域へのデータ保存と同様に考えられます。

私的使用のための複製

今回静止画像等を含めて無制限のダウンロードが違法化される法改正が検討されています。しかし、上記のとおり、PC内のキャッシュ領域外のハードディスクに著作物を包含したデータを再製することは、静止画であっても動画であっても音声であっても元々原則的に権利者の意思によらなければ、違法とされています。

では、今回静止画等ダウンロードが違法化されるという議論は、どういった改正を意味しているのでしょうか。

今回静止画等ダウンロードが違法とされるという文脈は、著作権法30条により私的使用のためのダウンロードが適法化されているという建付けが前提になっています。

すなわち、複製について著作権法30条1項は、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」(私的使用)を目的とする場合に限り、適法(複製を禁止しない)と定めています(著作権法30条1項)。

違法に公衆送信された著作物が含まれる音及び影像の録音・録画違法化

以上述べたように、原則複製は違法という建付けの著作権法にあって、私的使用目的の複製は適法とされました。さらに、違法に公衆送信された著作物を含んだ音及び影像の複製(=録音、録画)については、例外的に適法とされるはずの私的使用目的での場合であっても、さらに例外的に違法とされました。つまり、原則的に違法なダウンロードについて例外的に適法とされる場合が定められ、例外的に適法な場合から、音及び影像についてはさらに例外的に除外されたのです。

ただし、私的使用目的の複製が許されないのは、著作物が違法に公衆送信されている場合に限られます。適法な公衆送信については、私的使用の範囲内であれば、デジタル方式のダウンロードも適法という事になります。

静止画等ダウンロード違法化とは

今回の静止画等ダウンロード違法化は、音及び影像と同様に、違法な自動公衆送信の対象とされた著作物の私的使用目的の複製について、私的使用の場合は適法と定めた著作権法30条1項の適用対象から、さらに例外的にデジタル方式の複製を行う場合を無限定(※1)に除外しようとするものと理解されます。

つまり、違法に自動公衆送信される著作物については、私的使用目的であっても、デジタル方式の複製は無制限に違法となります。

※1 改正条文の予測から、音及び映像という客体の限定を取り払い、違法に自動公衆送信される著作物の私的使用目的におけるデジタル方式の複製は全て無限定に違法化するものと理解しています。

その事実を知りながら行う場合

さらに、違法に公衆送信された著作物の私的使用のためのデジタル方式の複製は、適用場面を限定するためのファクターを有しています。それが、「その事実を知りながら行う場合」という主観要件です。

現状は、残念ながら、違法に公衆送信された著作物もインターネット上には多く見受けられる状況です。しかし、違法に公衆送信されていることを知っている場合となると、さらに適用場面は限定される事になります。

このように、対象範囲を無限定に拡大する改正といっても、もともとかなり限定された場面の適用について、客体を限定だけを取り払うという話で、全体からみれば、今回の改正の影響は、限定的なものにとどまると考えられます。

改正条文の予測

参考資料として公開されている「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」に関する留意事項のなかに、 「自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製」という文言があります。おそらく、現行の「自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画」という文言を上記の「自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製」という文言に改正することが予定されているのではないでしょうか。

デジタル方式とは

上記留意事項中には、紙面にプリントアウトする場合は、私的利用であれば改正前と同様に違法化されないと記載されています。紙面にプリントアウトする場合違法とならない理論構成は「デジタル方式」に該当しないためと思料されます。しかし、現行のスキャナとPDFソフトの性能(※1)から考えれば脱法が容易であるうえ、紙媒体のプリントアウト及びプリントアウトされた紙媒体のスキャニングが「デジタル方式」に該当しない論拠が現状では不明確(※2)であり、この点は正直疑問です。

※1 OCR等の性能が向上し紙媒体のスキャニングデータを容易にかつ、非常に正確にデジタルデータに変容させることが出来ます。

※2 「デジタル方式」という限定の趣旨は、データが容易に複製拡散される点にあります。そうすれば、途中にアナログの複製を経由したとしても、最終的にデジタルデータとして複製される場合、「デジタル方式」の複製に該当すると考えるべきではないでしょうか。

関連記事一覧

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。