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札幌地方裁判所で、SMSアドレスの発信者情報開示を認める判決が出され、確定しました。

当エントリは、SMSアドレスと発信者情報開示という法的論点について、ご紹介する目的で発信されるものです。

I2練馬斉藤法律事務所リーガルグラフィック東京では、SMS も法律上「電子メール」に該当する点を論じた意見書を、上記札幌地方裁判所に提出しています。

なお、この論点は反対の見解も多いのではないかと思われ、現状では必ずしも主張が訴訟が認められるわけではありませんので、請求を行う際は他の発信者情報開示請求を行う場合に、付属的に付け足すことが出来る場面であるかなど、必ず専門家にご相談のうえで請求の可否を検討してください。

SMS の仕組み

ショートメッセージサービス(以下、「SMS」という。)と、一般的な電子メールサービスの違いは、前者が回線交換方式で実現され、後者がパケット交換方式で実現されている点にしかありません。

両通信方式は一長一短ありますが、結局、SMS と一般的電子メールの違いは、通信方式の違いに過ぎないことになります。

例えば、SMS も回線のシグナリングチャネルをとおして信号を送信しSMSC(ショートメッセージサービスセンター)と呼ばれるサーバを経由していることからその仕組みは電子メールと相似します。

ひとつの携帯電話からひとつの携帯電話に送信される SMS も、送信者の携帯電話から発信させた後、受信者の携帯電話に直接受信されているわけではありません。送信者と受信者の間に SMSC(ショートメッセージサービスセンター)と呼ばれる、SMS 用のサーバコンピュータが介在し SMS を取りまとめて、受信側クライアントコンピュータに送信しています。

したがって、SMS 送信の仕組みは一般的な電子メール送信の仕組みと全く異ならないのです。このように、法律上電子メールに SMS が含まれると解釈することに事実上の基礎も認められると考えられます。

法令上も SMS は電子メールアドレスに該当する


ショートメールアドレスが法律上電子メールアドレスに当たることは明文上に記載があります。
すなわち、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」2条1号に電子メールについては下記のとおり定義されています。

特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第二条

この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定める
ところによる。

一 電子メール 特定の者に対し通信文その他の情報をその使用する
通信端末機器(入出力装置を含む。以下同じ。)の映像面に表示されるよ
うにすることにより伝達するための電気通信(電気通信事業法(昭和五
十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。)であ
って、総務省令で定める通信方式を用いるものをいう。

これを受けて、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第二条第一号の通信方式を定める省令」が、次のとおり定めています。

特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第二条第一号の通信方
式を定める省令
特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(平成十四年法律第二十六号)第二条第一号の規定に基づき、特定電子メールの送信の適正化等 に関する法律第二条第一号の通信方式を定める省令を次のように定める。

特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第二条第一号の総務省
令で定める通信方式は、次に掲げるものとする。
一 その全部又は一部においてシンプルメールトランスファープロトコルが用いられる通信方式
二 携帯して使用する通信端末機器に、電話番号を送受信のために用い
て通信文その他の情報を伝達する通信方式

このように、法的に電子メールには、「携帯して使用する通信端末機器に、電話番号を送受信のために用いて通信文その他の情報を伝達する通信方式」が含まれることから、携帯電話番号兼用のショートメールアドレスも、電子メールアドレスに該当すると解釈して誤りではないことになります。

すなわち、SMS と一般的な電子メールは前者が回線交換方式で実現され、後者がパケット交換方式で実現されるという通信方式の違いしかないところ、前者の通信方式も電子メールに含まれることを法令が明言しています。


この点は、同省令は平成21年法改正によることから、同改正前より施行されているプロバイダ責任制限法上の電子メールの解釈に影響を与えないとの反論もあり得るところです。しかしながら、プロバイダ責任制限法及び、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第四条第一項の発信者情報を定める省令」は、共に、平成13年に制定され平成14年5月27日に施行されています。
これに対して、旧「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則」(総務省令第66号)第1条は、公布が平成14年6月21日であり、施行が平成14年7月1日で、すなわち、プロバイダ責任制限法及び同省令の、施行後に事後に施行されている点では、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第二条第一号の通信方式を定める省令」(平成二十一年総務省令第八十五号)と全く異ならないのです。つまり、プロバイダ責任制限法及び同省令は、電子メールの定義規定を特に定めず、電子メールにプロ責法上の特別の意義を与えず、事後に制定される法令も含めた他の法令との均衡的な解釈を求めているとも考えられます。
そうであるところ、プロ責法の事後に施行された旧「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則」(総務省令第66号)が同じく事後に改正され、施行された「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第二条第一号の通信方式を定める省令」において、電子メールに SMS を含まれることを明確化している以上、平成21年9月1日の「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第二条第一号の通信方式を定める省令」の施行により、プロ責法及び同省令の「電子メール」の文言に SMS が含まれることも特に否定されていないと解されるところです。
そして、SMS「アドレス」も、数字の羅列すなわち番号であり、「電子メール」に該当する SMS の「利用者を識別するための文字、番号、記号その他の符号」に該当することは明らかであり、よって、SMSアドレスは、プロ責法及び同省令上の発信者情報に該当することが明らかと考えられます。

まとめ


例えばドコモのメールアドレスは、初期設定のとき、「携帯電話番号@docomo.ne.jp」という設定とされている時代がありました。また、その頃から当該メールアドレスを利用しているユーザにおいては、現在のメールアドレスも、「携帯電話番号@docomo.ne.jp」を引き続き利用しているケースもあるかもしれません。そのとき、メールアドレスの開示とともに携帯電話番号も判明しますが、それは、メールアドレスを開示することに伴う副次的な効果に過ぎないことになります。

SMSも全く同様で、「携帯電話番号」とまったく同じ文字列でアドレスを特定する SMS メールアドレス開示の結果、携帯電話番号も判明するとしても、それは、たまたま、SMS メールアドレスと携帯電話番号が同一の文字列であるからに過ぎないことになります。あくまで開示を求めるのは SMS メールアドレスで携帯電話番号ではないことにご注意ください。

他には、特商法上も電子メールには SMS が含まれるという立法が採られていると理解しています。

このように、法令上、電子メールに SMS が含まれることが明らかであり、何の留保もなく「電子メール」アドレスが開示の対象となると規定するプロ責法及び同法を受けた省令においても、「電子メール」に SMS を含むものと理解されます(I2練馬斉藤法律事務所リーガルグラフィック東京私見)。

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