iTやコンテンツの法律/知財問題を重視する弁護士です

SUZURIは、ウェブ上でオリジナルグッズを委託販売できるインターネット上のグッズ販売委託サービスです。

グッズも注文があるまで実際にはつくりません。合成画像で商品イメージをつくるだけです。したがって、在庫やオリジナルグッズの販売をスタートするにあたってのコストも必要ありません。

クリエイター側は、経済的な面でリスクなくオリジナルグッズを販売委託できるため、メリットが大きいサービスです。

例えば、個人がオリジナルグッズを販売したいと思いたったときでも、迅速かつ経済的リスク無く、グッズ販売を開始できます。

他にもPIXVEBOOTHなど、新しいタイプのライセンスビジネスとして近年発達してきており、注目されます。

SUZURIの知的財産権規約

委託販売にあたって、SUZURIの利用規約を確認しましたが、今回は知的財産権に関する規定に対する検討部分を取り上げます。

SUZURI利用時の知的財産権に関する規定は、SUZURI会員規約の29条(アーティクル29)に定められています。

29条1項は、SUZURIサイト及びそのコンテンツの著作権等に関する規定であり、SUZURIサイトの全部ないし一部を無許諾で勝手にコピーして配信できないのは当然のことですので、クリエイターサイドからみれば、注意的な規定ということが出来ると理解されます。

クリエイター側にとってより重要なのは、29条2項以降ということになるかと思います。この29条2項が、クリエイターサイドがアップロードした画像などを客体とする知的財産権についてSUZURI運営社に対して与える利用許諾の内容を定めた規約になります。

利用を許諾する知的財産権の客体の定義

前提として、29条2項で問題となる知的財産権の客体を示すワードの語義については、2条(アーティクル2)各号で定められています。

29条2項が知的財産権の客体としているもののうち、2条で定義が定められているものは、「デザイン画像」と、「商品データ」の2点です。

2条(5)号は、デザイン画像を、「商品素材に付して加工する目的で、会員が本サービスサイト上にアップロードした画像データ」と定義し、2条(6)号は、商品データを、「商品の名称、商品の説明、商品に付すデザイン画像、商品の販売価格等その他の商品に関する情報」と定義しています。

つまり、デザイン画像や商品データを客体として成立する著作権、商標権などの知的財産権を対象として、29条2項は、会員が運営社に対して、利用許諾(ライセンス)をすること、そして、その内容を定めています。

非独占的利用許諾

ここからが、商品データ等を客体として成立した知的財産権に関する利用許諾の内容です。

利用許諾の内容は、非独占的な利用許諾であり、知的財産権の譲渡や、独占的な利用ではありません。

したがって、クリエイター、会員側としては、SUZURIにアップロードした画像データの著作権や、商標権など知的財産権を譲渡するという合意にはなっていません。

また、独占的な利用許諾ではありません。つまりSUZURIにアップロードした画像データについて、アップロード後は、同様の利用形態(例えば販売委託など)であっても、第三者に対して利用許諾ができない、という規定の内容にはなっていません。したがって、SUZURIにアップロードした元画像は、自由に第三者にも例えば販売委託など同様の利用態様であっても、利用許諾することが出来ます。

反面、会員は画像データなどをSUZURI運営社の管理するサーバーにアップロードすることにより下記で述べる非独占的な利用をSUZURI運営社などに対して許諾することになります。

利用許諾の具体的な内容

商品の広告、告知のフェーズ

まず、29条2項(1)号において、「情報通信ネットワーク、情報誌等含む任意の媒体を利用して、商品データ等の複製、頒布、自動公衆送信(送信可能化を含む)、修正及び改変を行うこと(本サービスサイトに掲載し閲覧させることを含む。)」を非独占的に利用許諾することになります。つまり、インターネットなど、或いは、情報誌などを例として挙げるあらゆる媒体で、運営社において画像データを複製して、媒体を通じて配信などが可能になります。

修正および改変については、SUZURIの性格から商品イメージを作成して配信するために必須となることなどから定められていると推測できます。

つまり、円形の商品に画像データを貼付して製品化する際など不可避に生じる画像データの加工などをライセンスすることが第一義であると考えられます。

ただし、必ずしも商品イメージの配信のみに限るという限定は付されていないことから、運営社において、凡ゆる配信形態で画像データを配信できることには注意が必要です。しかも、その際画像データに含まれる著作物や標章などを運営社において自由に変形、修正、翻案できるため思わぬ利用をされたとしても、一旦は利用規約で許諾を与えているということになりますので、重要な著作物や標章については、慎重にアップロードを検討する必要があろうかと思います。

つまりアップロードした画像データなどについては、運営社及び運営社から許諾を受けた者において、2次創作してインターネットで配信することなども、文言からは可能ということになります(ただし、そのような事態が現実的なリスクであるかは各自ご判断いただければと思います。)。

商品製造のフェーズ

つぎに、29条2項(2)号において、「デザイン画像を商品素材に印刷、加工し、商品として製造すること、及び、これに付随する一切の行為」とあります。これは、注文が実際に入ったときにSUZURI運営社において商品を作成するときに必要になる利用許諾で、販売を委託する以上当然の許諾ということになります。

商品頒布のフェーズ


最後に、29条2項(3)号において、「製造した商品を、第6条第1項の委託を受けて購入者に販売すること」を許諾することになっています。これも、販売を委託する以上当然の許諾ということになります。

利用許諾の内容まとめ

以上のとおり、(2)号及び(3)号は当然許諾が必要になる内容で、また、許諾の内容から予定していない利用を許す場面もあまり想定ができないと言えそうです。

利用許諾の内容として若干広範といえば、(1)号ということになります。しかし、画像データを加工して商品イメージを作成するというSUZURIの性質上、避けられない利用であることは間違いがなく、大企業であり運営社側で濫用的な利用をする恐れも低いという判断をする場合、大きなリスクとはならないものと理解されます。

ただし、運営社において画像データなどについて広範なインターネット配信が可能となること、理論上はデザイン画像を用いた2次創作なども許諾することなどから、重要なデザイン画像については、アップロードは慎重に判断する必要があります。

以上、総じて、サービス運用において必要になる形態の利用を許諾する内容で、(1)号に関して広範な配信を許諾する点に注意が必要な点を除いて、クリエイター側に良心的な規約と評価してよい許諾内容と思われます。

また、(1)号についても濫用的な意図で広範な許諾を求めているわけではなく、サービスの性質から運営社において防御的な意図で広範な許諾内容となっていると推測できます。

利用許諾の対象

29条3項で、SUZURI運営社において、29条2項で与えた許諾を再許諾する権限を与える内容となっています。これも、商品の作成、加工、発送などを下請け業者などに委託する必要上、避けられないので止むを得ない規定かと思われます。

ただし、ここも同じく29条2項(1)号との絡みが少し注意が必要で、運営社のみならず、運営社から許諾を受けた第三者において、アップロードした画像データなどを2次創作するなど改変してインターネットで配信することなども、文言からは自由に行えるということになります。

利用許諾の期間

SUZURI社に対する利用許諾を例えば解消したとしても、それまでに委託販売を行った部分については、遡及的に解消できないことが定められています。この点も、すでに販売してしまった商品を回収することは事実上不可能と考えられるため、性質上やむを得ない規定と理解されます。

クリエイターの権利管理業務

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